徳之島のことわざ

ここに紹介する「ことわざ」は、平哲治さんが小学校在任中に、
阿権集落を中心に採集したもので、多くは郷土学習の教材として活用されたものです。

前編
泣きゅん子ねんど乳飲ましゅん(ナキュンシクヮネンド チィヌマシュン)
  泣いて来たら、頼って来たら、だれでも助けてやりなさい。

二才と処女や島ぬ宝(ニシェト メエレエヤ シマヌタカラ)
  青年男女は島の宝である。

当方ぬ親類ゆり近隣ぬ他人(トオハヌ キョウデエユリ スバチラヌ タニン)
  遠くの親類よりも近くの他人がよい。

似合ん釜ねん似合ん鍋(ニチュン カマネン ニチュンナベ)
  夫婦は似合っている心を持っているものである。

夫婦話や犬猫なんま聞かすな(トゥジュトバナシヤ インマユナンマ キカシナ)
  夫婦間のケンカ話は犬猫にも聞かしてならない。

夫婦ぬ七違や七蔵建てりゅん(トゥジュトヌ ナナチガイヤ ナナクラ タテリュン)
  夫婦の七つ違いは七つの蔵を建てるほど幸福である。

妻や当木
  人の妻たる者は、その家に起こる波風(困ったこと)その他の全責任を持つ心掛けであれ。

他島 関係や牛乗り馬乗り(チュンシマ マジワイヤ ウシノリ マァノリ)
  他村関係は非常に係累が多く、金や物も使う。

短や長ねんどまかりゅん(ツィキヤ ナガアネンド マカリュン)
  短い物は長い物に取り巻かれる。大きい物に小さい物は利用されがち。

他人子 愛しゆか 大道掃れり(チュンクヮ カナアシユカ フウミチサレリ)
  他人の子供を可愛がるよりも大道を掃いておく方がみんなのため。

働き出しより食出し(ハタラキジヤシ ヨリクエダシ)
  働いて儲けようとするよりも食物を節約せよ。

僧さん人ぬ一門や一門がでぃ僧り(ハゴサンヌ チュヒキヤ チュヒキガディ ハゴリ)
  僧い者の一門は、一門まで憎い。

人使役ゆん人や片目と片耳を塞れ(チュウツコユンチュウヤ カタムイト カタミンヲ クジレ)
  人を使う人は見ぬふり聞かぬふりしなさい。

人や盗っ人 夜や雨(チュヤネイスド ユルヤアメ)
  人を見たら盗っ人と思え。また夜になると雨と思いなさい。

人真似しか馬なりゅん(チュンマネシカ マァナリュン)
  人の真似をすると失敗することが多い。

人ぬ狡滑人と作物ぬ過物や物ならん(チュヌ スイギリムント ムンツクリヌ スギリムンヤ ムンナラン)
  人のずる賢いものと作物の出来過ぎた物は役に立たない。

付き合ていか兄弟(ツキオウティカ キョデエ)
  親しく付き合うと他人でも兄弟のようになる。

人ねん頼ってから臑なん馬つなぎゅん(チュネン タンバッテカラ スイネンナン マァツナギュン)
  人に頼まれたらよく聞いて責任を持ってやってあげよ。

人や鬼(チュヤウニ)
  人間は鬼のようにこわいところがある。

布や横糸から 人や妻から(ヌノヤユクイトカラ チュヤトジカラ)
  反物は横糸如何により、人は妻次第で善くもなり悪くもなる。

悪友寄り合てか剣刃遭ゆり 善友と交わてから畳表 踏みゆり(ワレドゥシ ヨリオウティカ ツルギフアオウユリ イイドゥシト マジワティカラ タタミオモテクミュリ)
  悪友と付き合えばついに危険がその身に及び、善友と交われば平安その身に及ぶという意味。

腹まがりどあん肝まがりや無ん(ワタマガリドアン キムマガリヤネン)
  ひもじいゆえに悪事を為すという意味。

愛児やよそにむませ(カナハンクヮ ヨソニムマセ)
  可愛い子供は他所で修業させよ。

食てど武士(コウテド サムレエ)
  武士も食わねば何もできない。

烏や黒はや僧らん □ねん僧りゅん(カラスヤ クルハヤ ハゴムイカラン クチネン ハゴムイカリュン)
  烏はその羽色によって憎まれず、口ゆえに憎まれる。

借りんや笑顔 返しんや泣き顔(カリンヤ ホウラア カエシンヤ ナキヅラ)
  借りるときは笑顔、返すときは泣き顔。

倹約や有ん間(ケンヤクヤ アンマ)
  倹約はある間にしなさい。

愛はん夫妻や丘上ねん立ちゅり(カナハン トゥジュトヤ オカンウィネン タチュリ)
  愛し合っている夫妻は、風当たりの強い場所、生活しにくいところでも暮らすことができる。

飢しやど甘は愛はど奇麗(フシャド マアハ カナホド キュラア)
  ひもじければどんなものでもうまい。可愛ければどんなものでも奇麗に見える。

旦那掛りゅてか 厳し旦那掛れ(だんなかありゅてか きびしだんなかあれ)
  旦那を持つなら厳しい旦那がよい。

旅や家ぬ茅壁忘んな(タビヤ ヤヌ ギャクベ ワッスンナ)
  旅に出たら茅葺きの生家を忘れず辛抱しなさい。

知恵や臍ぬ下なん持ちゅむん(タマシヤ フスヌ スウナン ムチュムン)
  知恵は見せびらかさずに臍(へそ)の下に持ちなさい。

唐人や鳥ぬうらんだくぇ(ヤテチュヤ トリヌ ウランダクェ)
  唐人は鳥が内に入らぬだけの仕事しかできない。

難儀ぬ後や御馳走(ナンギヌアトヤ ゴチソウ)
  働けば後は楽に暮らせる。

生物知りぬ大傷ぬむと(ナマモヌ シリヌ ウウキズィ ヌムト)
  なまかじりは、知らないよりかえって悪い。

物しい奇麗ど子産し奇麗(ムンシイ キュラアド クヮナ キュラア)
  物事を奇麗にする者は、奇麗な子供を産む。

物言ん者ど流橋につまりゅん(ムンイユンムンド ナガレバシニ ツマリュン)
  余計なことをいうと、わざわいついに身に至る。

親子ま家や持ち持ち(ウヤクヮマ ヤヤ ムチチムチチ)
  親子も所帯は別々に持つもの。親子の馴れ合いを戒めている。
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